四半世紀前の旅立ち、パリへ2012年06月10日

この写真は、翌年旅行で訪れた時のもの

朝、目を覚ますと、ひんやりとした空気が窓から入り込んでくる。それが顔に当たると、遠い思い出がよみがえる。あれから25年経った。スペインでの生活を綴りますと言ってからも6年経ってる(笑)向こうでは、一通りの季節を過ごしたが、やはり思い出深いのは初めてその地を踏んだこの季節だ。6年前に機会があればと記した、スペインまでの道中を書いてみよう。ただ、長いのでたどり着けるかどうかは不明(笑)

1987年5月29日(以前は28日と書いたが、間違い)夕方、伊丹空港を出た。大学を一年休学し、専攻のスペイン語習得、そしてその文化を知るために、単身ヨーロッパの最果てスペインへ旅立つのであった。当時からスペインへの直行便は無く、ソウル〜アンカレッジ経由の大韓航空で実に20時間ほどかけてパリへ向かった。あまり汚い格好では、過激派と間違われるからと、濃いグレーのシャツに少し濃いめの橙色のネクタイ、アイボリーの麻混のスーツに白い靴と言う出で立ちにしたが、かたぎとは少し離れている気もした(笑)

当時の日記の離陸時の感想は「飛行機は窓際の席だった。離陸の時の加速がすごい。F1はこんな感じだろうか、などと考えていると車輪が陸を離れた。気持ち悪い。足の下には何もない」確かに最初は、滑走路のゴツゴツした感触が、ダイレクトにおしりに伝わってくるが、機首が上がったかと思うと、いきなり振動が無くなり宙に浮いた感覚になる。地に足が着かないとはまさにこのことか、一気に不安になったのを憶えている。ただ、それは一瞬で「ゾッとしたが、すぐ慣れた。雲の上に出た。空を見る。青い!いや青いというより黒っぽかった。そう、青い空に宇宙の黒が混ざっている。それほど上空にいるんだ。」と、既に外の景色に興奮気味のようだった。

乗り換えのソウルで、銃を持った兵隊が滑走路をうろうろしているのに驚き、アンカレッジでは、宮本さんおすすめのアラスカうどんを発見して喜ぶ。施設に表示される言葉も、日本語など無くなり、海外にいるんだと実感し始める。ソウルで乗り換えた飛行機の座席は真ん中の一番後ろ。右隣は、伊丹〜ソウルも同じだった、パリへ出張の同年代のデザイン会社勤務の女性。左隣は、パリの学会に出席する、大阪市大の哲学の先生。パリに5年間住んでいたというこの先生の案内で、まさに関門だった税関通過から、リムジンバスで市内へ行くことができた。パリ市内へ着き、そこで二人とは別れ、タクシーでオーステルリッツ駅へ向かった。レイモン・ロッシュ似の運ちゃんは、石畳のセーヌ川沿いを飛ばす飛ばす。橋はアンダーパスで次々通り過ぎ、ゴツゴツとゆられながら外を見ると、明らかに日本とは違った風景。ああ、外国に来たんだと少し実感がわいてくる。走っている車は、結構ボロく、日本のようにピカピカに磨いている車はほとんど無かったのが印象的だった。朝の8時過ぎと、通勤ラッシュだろうか、結構車が走っていた。

鉄道はパリ市内まで入ってこず、それぞれの方向にいくつかターミナル駅がある。スペインへ行くには、南西にあるオーステルリッツ駅から列車に乗らなければいけない。まずはコインロッカーに荷物を入れて、切符を買いに行く。切符売り場は、2〜30はあっただろうか、かなりの数の窓口がある。しかし、開いているのは2つほどで、20人ほどの列があった。順番が来た。六カ国語会話の本であらかじめ調べておいた、切符を買うページ。カタカナ・フランス語で「サラマンカ行きの切符を一枚ください。」と言うが、発音が悪く通じないのか、ダメだと手を振るだけ。「ええ??」繰り返すが通じない。ページを見せてもダメだ!これがフランス人の意地悪なのか???切符すら売ってくれないのか・・・。そう思ったら「インターナショナル」と言ってる。何のことか、最初わからなかったが、そうか!列車にも国内線と国際線があって、スペイン行くには国際線の切符売り場へ行けと言うことなのかとわかった。場所を説明している様だが、わからないから絵に書いてもらった。すぐ隣だった(爆)

国際線の切符売り場へ行き、サラマンカ行きの切符をくれと言うと、夜の10時22分発になると言われた。今朝の9時くらいだから、これから12時間以上もパリにいるのか・・・言葉できひんし無理!貰い物のトーマス・クック時刻表では、昼の2時18分にスペイン行きの列車があるはず。それに乗りたいと言うと、おじさん困った顔になった。色々説明してくれるが、わからん・・・。何で売ってくれない!六カ国語会話(の本)を駆使していると、ある言葉におじさん反応。「シャンジュ・ドゥ・トラン(乗り換え)?」「シャンジュ・ドゥ・トラン!!」なるほど〜、2時18分の列車でサラマンカに行くには、乗り換えが必要だが、10時22分はサラマンカ直通だ。たぶん、ろくに会話もできない東洋人をみたおじさんは、乗り換えの必要な列車に乗って、目的地とは違う場所へ行ってしまったら大変だと思い、直通の列車を進めてくれたようだった。意地悪ちゃうやん、フランス人。執拗に勧めてくれたが、一刻も早くこの花の都を出たかったので、乗り換えが必要な2時18分の切符を買った。

やっとのことで切符を手に入れるまで、駅に着いてから既に2時間が経っていた。