四半世紀前の旅立ち、サラマンカに2012年06月16日

初めて見た地平線

目覚めたのは5時半頃だった。車内アナウンスなど無く、停車駅には静かに停まって、そして動き出すので、停車する度に駅名を確認しなければならない。教わったわけでもないのに、すぐに降りられるように、荷物を廊下へ出して外を眺めていた。一応経験から学習している様だ(笑)廊下には、同じように待っている若者が数人いる。一人の青年が話しかけて来た。金髪で、長身のジョン・デンバーって感じ(ジョン・デンバーの身長知らないけど)。英語もスペイン語もペラペラだ。名前はシェル。スエーデン人で、ストックホルムから47時間、列車にゆられてきたそうだ。彼もサラマンカで勉強するらしい。とてもさわやかな青年だ。こちらも聡明さを出そうと「スェーデンのことなら知ってるよ!スカンジナビア半島にあって、海岸がクネクネで、ボルボにABBAにA〜haだろ。」と得意げに話すと「A〜haはノルウエーなんだけど・・・」とつっこまれてしまった(笑)ちなみに、海岸クネクネのフィヨルドもノルウエーだ。クネクネ海岸のリアス式海岸のリアスは、スペイン語由来である。

メディナ・デル・カンポに着いたのは6時半だった。普通に走って30分も遅れるか?しかし、これが普通なのだ。シェルくんが乗り換えの列車を訊いてくれ、無事乗り換え完了。夜は明け、窓の外に広大な平野が広がる。見渡す限り畑と荒れ地だ。生まれて初めて地平線を見た。線路沿いには、赤い花が一面に咲いている。何の花だろう?とシェルくんに訊くと「花はあんまり詳しくないんだ」と苦笑いしていた。しかし、何となくケシの花に似ている。一面に咲くケシ。もしこれがケシなら、スペイン人の陽気さの原因はここにあるのでは!(爆)と、一大発見をしたような気になった(笑)

8時半、サラマンカ駅に着く。小さな田舎駅。改札が無いので、そのまま駅舎を出ると、ロータリーになっている。駅にも駅前にも、歩いてる人もいない。シェルくんと別れて、ホーム・ステイ先へ向かう。しかし、事前に学校から送ってもらった地図では、よく場所がわからない。客待ちのタクシーが2、3台いた。ここは無理せず、タクシーを使おう。学校から送られて来たホーム・ステイ先の住所を見せる。がんばって会話してみようと「長いか?(遠いかと訊きたかった)」と訊くと、おじいさんの運ちゃんわかってくれたようで。「そんな事無い」と答えてくれた。街並は、一戸建ては無く、全て10階建てくらいのマンション。高さも結構揃っていて、オフィス街を連想させる。

5分もかからずに到着。トランクから荷物を降ろし、5ペセタ(当時約6円)のチップを渡すと、おじいさんの顔がみるみるほころび、インターホンで取り次いでくれた。そうなのか、スペインでは、建物の入り口は全てオートロックで、玄関のインターホンで開けてもらう仕組みだと、そのとき知った(笑)しかし、おじいさん、なんだかゴチャゴチャ話してる。荷物持った東洋人が来てるぞとでも言ってるのか、ちらちらこちらを見ながら、何やら私の説明をしている様だ。話がついたのか、ドアが開き中へ入る。薄暗く、ひんやりとした廊下の突き当たりにエレベータの窓から漏れる明かりが見える。4人も乗ればいっぱいになりそうな小さなエレベータ。扉はクローゼットみたいな折りたたみ式で、手動だ。内側の扉は無く、大きく空いた出入り口を壁と扉が上から下へと流れる。ホーム・ステイ先は4階。スペインでは、1階がBで、日本での2階から1階と数え始める。だから、4階は日本式では5階。4階と言えば、4のボタンを押すだけだから間違わないが、下りる時は注意が必要だ。

目的の家は、エレベータを降りてすぐ右にあった。呼び鈴を鳴らし、ドアが開くと、おばさんが一人立っていて、中へ入れと言う。日本を出てから、飛行機、列車を乗り継ぎ40時間以上掛けて、やっとたどり着いたスペインでの滞在先。ホッとしたのもつかの間、何となく様子が変だ。ウェルカムな雰囲気じゃない(笑)おばさん、盛んに何か喋っているが、わからない。落ち着いて聞くと「こんな話は聞いてない!お前の部屋なんか無い!」と言ってる様だ。ええ?