ヨースティー入院2006年06月17日

11日、BBAから帰る途中、時刻は11時25分頃。妻から携帯に電話で、「ヨースティーがボタン電池を飲み込んだかも知れない、念のためにタクシーで診てくれる病院へ行って来る。」と連絡が入った。「わかった、帰ったらすぐに行くわ。」と電話を切る。見ると10時半頃にメールが入っていた。地下鉄では携帯はつながらないので、近鉄に乗り入れ、地上に出たところで、病院を検索しようとしたら、携帯の電池が無なった。竹田駅で乗り換えの10分ほどが長く感じる。何ともなければいいが・・・。急いで家へ帰り、携帯を充電器へ、とたんにベルが鳴った。「やっぱり飲み込んでた。今ちょうど胃と十二指腸の境くらいまで行ってて、胃にあったら内視鏡で取れるけど、腸に入ったら出てくるのを待つしかないって言ってはる。ほとんどがそのまま便と一緒に出てくるらしいて言うたはるけど、内視鏡にするなら、すぐに返事しないと取れなくなるからどうしよう。」と妻が説明した。そう急に言われても正直わからない。病院の場所を訊き、すぐに行くから、行ってから返事すると言って車で向かった。

病院には10分弱で到着、時刻は12時40分頃。夜間救急入り口にヨースティーを抱きかかえる妻と、チリプーが座っていた。すぐに小児科へ行き、医者の話を聞く。壁にはレントゲン写真、身体のちょうど真ん中から右寄りに、白い電池の影がクッキリと写っている。辻本茂夫に似た若い医者は、眉をひそめながら「レントゲンでは、胃と腸の間くらいまで行ってるように見えますが、時間が経っているので、もう腸に行っている可能性が高いと思います。」「大体の場合、1日〜2日で自然に出てきますが、腸の中で動かなかった場合は危険なので、手術で取り出さないといけません。」「胃にあれば内視鏡で取り出せますが、これも暴れると危ないので、全身麻酔をかけて行います。ただ、この場合もう胃にない可能性もあるので、徒労に終わるという結果もありますが、どうしましょう。」

どうしましょうと専門家に言われても、逆にこっちが訊きたい。「大体の場合は、自然に出てきますが。」と言っているが、悩むところだ。乳児に全身麻酔というのは、あまりやりたくない。「内視鏡で取り出すなら、レントゲンでは胃と腸の境まで来ていますから、5分10分が勝負です。もしかすると、もう腸に行っているかも知れません。」と言うので、下剤で様子を見ることにした。だが、この話の間、ヨースティーはずっと泣いている。医者が「何で泣いているんですかね。」「さあ、たぶん眠たいのに寝られないからだと思いますけど。」「そうですか。お腹が痛いからだと大変ですからね。」そんなこと、まだ言葉も話さないのに、わかるわけがない。「もう一度レントゲン撮ってみましょうか。」と言うことで、再びレントゲンを撮った。

上がってきた写真を見ると、電池が真ん中の方に動いている。「この位置だと、まだ胃にあるかも知れませんね。」と言うので、「そしたら内視鏡で検査してください。」と頼んだ。全身麻酔のリスクもあるが、胃や腸内にとどまって腹膜炎を起こす可能性もある。何よりも、そう言う心配を1〜2日続ける事が嫌だった。その夜は、内視鏡の専門医が当直でもあったので、すぐに用意が始められた。インフォームド・コンセントを受け了解したという誓約書にサインをする。地下へ行き、チリプーを抱いて廊下で待つ。静かな院内には、ずっとヨースティーの泣き声だけが響いている。

点滴で麻酔をうつらしいが、一向に泣き声は止まない。5分ほどして、妻が呼ばれ中に入る。そうこうしている間に、腸まで行くんじゃないのか?と思うくらい長く感じる。それからまた5分ほど経っただろうか、ヨースティーの泣き声が聞こえなくなった。10分?20分?いや、時間の感覚がまるでない。静まり返った廊下で、じっと待つ。胃に無かったら、腸で動かなかったら、などいろんなことが頭をよぎる。チリプーもかなり眠たいだろうが、いつもと違う雰囲気に寝られない。実際は10分か15分くらいだったのだろうか、看護婦さんがやってきて、「出ましたよ。」と教えてくれた。「ほんまですか、ありがとうございます。」どっと緊張が解け、体が熱くなった。

ベッドに横たわるヨースティーは、点滴をつながれ、酸素マスクをしていて、見るからに痛々しい。息がかなりしんどそうで、お腹が激しく動いている。「朝には目が覚めると思いますので、入院手続きをしてください。」ちゃんと目を覚ませよ、と願いながら見ていると、マスクがうっとしいのか、手で払いのけようとした。その動きを見て、何となくホッとする。観察室で手続きをし、2時過ぎに病室へ移動する。妻は残ることに。チリプーは「みんな一緒に帰りたいの。」と言っていたが、説明して家に帰った。3時過ぎ、チリプーも不安だったようだが、ひとつ本を読んですぐに寝てくれた。