僕らの季節2007年11月03日

 夏の間、我が物顔だった太陽も優しくなり、心なしか空の色が薄く感じる秋。モクモクと白く、何処までも白く密度の高かった雲も、剥がした綿菓子のようにスジ状や鱗状に空を覆っている秋。あれだけ眩しかった緑も、薄明かりのなかに沈んでしまったような秋。夜の空に輝いていた星も、ちょっと休憩した様な秋。秋は寂しげ、だんだん色が薄れていく。

 だが、太陽が沈む時、薄い空と薄い雲は、それまでためこんだ色彩を一気に吐き出すように、紅く、紅く、空を彩る。山の木々は黄色や赤に着飾り、その枝に果実を実らせる。駆け抜ける風に遊ばれていた緑の稲は、金色に輝き、もう風に負ける事は無い。寂しくなった夜空には、月がそのすべてを独占する。

 その一瞬のために夕陽は輝き、木々は色づき実を付け、丸い月が夜を照らす。フルパワーじゃなくていいさ。走り続けなくていいさ。僕たちもそんな季節になったんだから。